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[PR]:猫小屋日記

学生戦争 黒乃×怪人 黒乃の親友:猫小屋日記


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学生戦争 黒乃×怪人 黒乃の親友

■企画元
 学生戦争ったー

■登場人物
 杜白 黒乃<モリシロ クロノ>
 水山 怪人<ミナヤマ カイト>







 その時私が目にしたのは、事切れる親友と、焼け付くほどに真っ赤な血しぶきと、それと同じような真っ赤な仮面。そいつは私の親友の形見……ペンダントを奪い去ると、絶望と恐怖に固まる私の目の前から走り去って行った。

 許さない。私はあの、赤面の男を許さない。絶対に、この手で復讐するんだ。
 死んだあの子なら、今の私に「私の事は忘れて、あなたは楽しく、幸せに生きて。」って、そう言うに決まっているけど……でも、私はそんなこと出来ない。出来るわけがない。あなたを失って私の世界は、意味を失ってしまったのだから。

 学校の屋上。杜白黒乃は一人、悶々とその復讐心を滾らせていた。それでも、屋上にいる分、黒乃は少しだけ気持ちが楽だった。吹き抜ける心地よい風は、窮屈に閉ざされた教室や街中よりも、幾分、彼女の心の炎を弱らせた。

「またサボってるな。」
 ・・
 まただ。また、水山怪人が現れた。先日の昼の一軒から、この男は頻繁に屋上にやってくるようになった。

「おうい……無視か。むし…。うん、さては虫の居所が悪いな?」
「面白くない。」
「あ、そう。」

 怪人は、黒乃との距離を保ったまま、その場に座り、いつもどおり、握り飯をほおばり始めた。黒乃は一息飲み込むと、意を決して男に近づいた。屋根の上と地面という大きな上下の距離がなければ、体が触れるかという距離。そこまで移動し座り込むと、少しだけ目を背けながら、パンをほうばった。今日の昼食は、焼きそばパンとチョコチップメロンパンだ。黒乃は、無意識下で、怪人が来るまで、口にするのを我慢していた。心のどこかで、楽しみにしていた。
 怪人との会食を重ねるうちに、黒乃は、この男がどんな人間なのかを少しずつ知っていった。決して秘密には踏み込まず、距離をとる。他人を無下に扱わず、ただ、待っていてくれる。黒乃の心の内を理解しているかのように、怪人は、毎日、優しく、他愛もない事を話し続けた。おかげで、怪人の居るうちだけは、黒乃は、復讐心に身を窶すことなく気楽になることができた。

 けれど、今日の復讐の炎は、いつもよりも強かった。風に触れ、怪人の話に誤魔化されても、消えることなく、黒乃のこころの中でじりじりと燃え続けていた。

「ねぇ」
「ん」
「何で戦争してるんだろう。」
「個々に理由なんてないだろう。皆何かを守ってるのさ。」
「そうなのかな。」

 黒乃は、そんな答えでは到底納得できなかった。他人の守りたいものなんて知らない。私達は、何かを奪おうとしたわけではない。それなのに、奪われてしまったのだ。

「まぁでも、殺すのが楽しくなってしまった人も居るだろうな。悲しいことだよ。」
「悲しい?どうして?」
「まさか、生まれながらに同族殺しをやりたい奴なんていないだろうと思って。…黒乃も、人殺しなんてごめんだろ。」
「…」
「まぁ…ひ」
「……殺したい奴は、居る、よ…!」

◆◇◆

 怪人は、黒乃にかける言葉を考えていた。
落ち着けとも、考え直せとも、その程度の安っぽい言葉は通用しそうも無い。こいつは相当、根深いところまで蝕まれているようだ。とはいえ私は、学生の無意味な殺し合いを止めなければならない。それが師からの教えであり、私の願いでもある。

 戦中。憎悪が支配するこの時代に、黒乃のような人間は多い。特に学生は、その傾向が強かった。しかしこの黒乃は、その中でもとびきり、大きな闇を抱えているようだった。怪人は、それがどうにも気がかりで、こうやって、ほぼ毎日、屋上へ足を運んでいた。

「でも」
「…」
「私もきっと、黒乃が殺されたなら、そう思うかもしれない。」
「でもって、何。」
「あー、いや…」
「適当な事言わないで。」
「悪い。すまん。」
「いい…けど…。」

 上手くいかない。いつも、何をしてもこうだ。私はどうにも、上手く物事を進めることができない。思えばあの時も、一時の油断があの娘の命を奪ったのだ。


 怪人は、数ヶ月前の戦いで、黒軍の少女の命を奪った。厳密には、少女の願いを聞いて一思いに楽にしてやっただけなのだが、それでも、いくつも変わらない、学生の少女の命を奪ったことには変わりなかった。怪人は、この際の失態が、いつまでもいつまでも、心の底に重く居座っているのを確かに感じていた。しかしこの重みは必要な事なのだと、怪人は、必死にそれを一人受け止めようとしていた。
 怪人はこの少女と、一つ、約束をした。
 二つのとても小さな宝石が入った、小さなペンダント。これを、残した友人に渡して欲しいというのだ。怪人は、これを快く受け入れた。目印は同じペンダント。探せば、すぐに見つかるものだと考えていた。

 しかし、探せど探せど、そんなものは見つからない。隠しているのか、死んでしまったか、どちらにせよ、一朝一夕で見つけられるものではないことを知った怪人は、大きな呪いを背負わされた事を知った。渡すか捨てるかしない限り、このペンダントは、怪人にあの日を鮮明に思い出させる。案の定、怪人は何度も夢に見、苦しんだ。
 それでも、捨てることは出来なかった。少女の思いを無下にし、捨てることは、今感じている苦しみの何倍も、その後の自分を苦しめると分かっていたからだ。自分は、簡単に命を諦められるような人間ではないことを、怪人自信がよくわかっていた。最後の願いを無視するなんてこと、できるはずが無い。それならば、あの日、あの娘の首をかき切った感触、浴びた血潮、痙攣するその姿を何度もフラッシュバックしたほうがまだマシだ。

「ね、ねぇ。」

 とん、と、黒乃の手が怪人の頭に触れた。それに反応して、怪人の意識は、現実世界に帰ってきた。どうやらあの後すぐに、正気を失ってしまっていたらしい。現実世界は、すでに夕暮れの中だった。
 怪人はまず、服の中に隠したペンダントを確認した。少女のものよりも二回りほど大きなペンダント。自分への戒めのため、少女の血を吸ったほんの小さな布切れとその少女のペンダントを詰め込んだ、少し無骨な赤黒いペンダントだ。

「もう、帰る時間だから…。」
「あ、うん。ありがとう。」
「ごめんね。」
「黒乃は悪くないよ、こっちこそ悪かった。」

 食べかけのおにぎりをビニール袋に突っ込むと、怪人は黒乃と一緒に屋上を後にした。
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