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<学生戦争>黒乃×怪人「鬼夜叉黒乃」:猫小屋日記


<学生戦争>黒乃×怪人「鬼夜叉黒乃」

■企画元
 学生戦争ったー

■登場人物
 杜白 黒乃<モリシロ クロノ>
 水山 怪人(赤軍版)<ミナヤマ カイト>
 武田 猛人<タケダ タケヒト>


===
 水山怪人は、猛人に偽の情報を流させ、白軍をかく乱した上で、単身で白正規軍の施設に潜入していた。目的は、黒軍生徒、杜白黒乃の救出…そして赤軍への引き込みだ。

 黒乃は、黒軍の諜報部員である。
 白軍に鹵獲されたのは、スパイ任務を行っていた所を白正規軍に発見されてしまったからだ。怪人にとってこれは、友人を失う危機であり、それでいて仲間を、赤面隊の勢力を増強するチャンスでもあった。こんな状況下で、赤面が動かない筈が無い。

「それでは、上手くやってください。」

 白正規軍の姿をした女が、学生服を着、黒い鬼の仮面で顔を隠した怪人へ、黒乃の武器と、鍵を手渡す。この女は、元白軍、現赤軍所属のスパイだ。

「ありがとうございます。そちらこそ、お気をつけて。」

 黒乃の武器を担ぎ、手に武器を持ち直すと、怪人は「猛人と内通者によってお膳立てされた、至極安全な道」を使い、黒乃が監禁されている部屋まで急行した。

◆◇◆

 怪人は、B1F、牢獄のフロアにやってきた。ケモノの腐った匂いがする。
 牢獄には、およそ人だったとは思えない醜悪な物体が、転々と転がっていた。それにしても、敵同士で結んだ協定など、クソの役にも立たないのだと実感させられる。
 この有様は、死体の処理もままならないのか、それとも、あえてそうすることでここに来る人間の戦意を低下させているのだろうか。しかし怪人は、それらの意図を深く考えはしなかった。ちらほらと学生服やセーラー服が残っているのを見、あふれ出す怒りを沈めることで精一杯になっていたからだ。
 踏みしめる一歩一歩に怒りの念を込め、この状況を作り出した大人たちを呪いながら、怪人は少しずつ、最深部に待つ、黒乃へ近づく。鬼の面もあいまって、復讐鬼のような出で立ちで、黒乃へと寄ってゆく。その姿は、しっかりと、黒乃の目にも映っていた。

◆◇◆

 黒乃は、牢の中で静かに待っていた。怪人は黒乃の武器と同時に預かった鍵で扉を開く。古びた金属がこすれる音と共に、ゆっくりと扉が開いた。

「迎えに来たよ。」
「誰?」

 声色を変えて話す怪人が誰なのか、黒乃には分からなかった。ただ、自分を助けに来たのだろうということは分かった。

「私の武器…。」
「……後で渡すさ。」

 黒乃に不信感が募る。この男は、何をするつもりなんだろうか。しかし、今はとにかくここから脱出しなければならない。黒乃はひとまず、警戒しつつも、鬼仮面の学生についてゆくことを決めた。

「あなたは誰。」
「同じ学校の生徒とだけ言っておこうか。…とにかく今は黙ってくれ。白軍に気が付かれたら二度と日の目は見られないよ。」
「うん。」

 黙って怪人に付き、進む。どうやったら白軍の根城の構造をここまで理解できるのだというくらい、ぐるぐると細い道を、誰にも気が付かれずに抜けていった。
(凄い…。こんなの、諜報部でも知らないんじゃないの…)
 黒乃の中で、信頼と疑いが膨らんでゆく。黒軍も知りえないような情報を知っているこいつは、本当に黒軍の生徒なのだろうか。今は従うとしても、万が一に備えておいたほうが良いだろう。
(まぁ今は、武器もこいつが持っているんだけど。)

「さぁ、出よう。」

 都合よく停止している地下の空調ファンの隙間から、怪人が手を差し伸べる。この空調をとめたのも、内通者たちの仕業だった。ことは全て上手く回っているというわけだ。
 黒乃は怪人の手を取ると、少し大またで、ファンの隙間から外へと脱出した。

「ぬけた…。」
「あぁ、抜けた。」

 黒乃に背を向けながら、怪人が仮面を入れ替える。黒い鬼仮面を外し、いつもの赤面を装着した。

「お前…、お前は!」
「まて、叫ぶな。まだここで気が付かれるのはまずい。」

 しかし黒乃は止まらない。鬼面無しでも、復讐鬼のようだった。事実、復讐に燃えているのだ。親友、相葉佳世を殺した本人、赤面を目の前にして、落ち着いていられるはずが無いのだ。 ただ、武器も持たないか弱い黒乃は、怪人に大した抵抗をすることは出来なかった。すぐに間接を極められ、身動きを取れなくされ、口をふさがれた。

「大人しくしろ…!」

 ワラワラと、数人の赤面隊員が現れた。彼等は手早く、黒乃の手足を縛り、猿轡をつけ、無力化した。その中でも飛び切り大きな男…猛人が、怪人に耳打ちする。

「どうする。」
「まずは連れて行く。私に因縁があるのは分かっていたことだ。…だからこそ話がしやすいと踏んだんだけどな。」
「分かった。」

 黒乃は、軽度の麻酔を打たれて、力が入らなくなっていた。猛人がこれを担ぎ、赤面隊たちは、白軍に気が付かれる前にその場を後にしたのだった。

◆◇◆

 黒乃は、赤面隊拠点の一つにつれてこられていた。何も無い無機質な部屋は、息遣いさえもが木霊する。部屋の中には、怪人、猛人、黒乃の三人が取り残されていた。

「そろそろ意識もはっきりしてきた頃か。」

 怪人が、黒乃と目線を合わせる。黒乃の目にはすっかり、生気と殺気が戻ってきていた。荒い息遣いは、壁に何度も反響し、渦巻く怒りのよどみを発生させていた。

「よさそうだな。…お前のペンダントを見て分かったよ。私との因縁が。すこし、話を聞いてもらおう。」

 黒乃は、ただ怪人を睨んだまま、相変わらず荒い呼吸を続けていた。

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 猿轡を外され、呼吸の音が少しだけ小さくなる。

「タケ、お前はもういい、下がっていろ。」
「あぁ。」

 猛人の足音と、扉の開閉の音が響いた。部屋には、怪人と黒乃の二人だけが取り残された。張り詰めた空気が、二人の心を締め付ける。

「…まず先に質問させてもらうが、そのペンダントは、ペアの品で間違いないな?」

 黒乃の反応は無い。仕方なく、怪人は、自分の胸に下げた大きなペンダントを開き、中から、血のついた布と、同型のペンダントを取り出した。黒乃の表情が急に険しくなった。白軍基地前で見た、復讐鬼の表情だ。間違いないなと、怪人は確信した。

「これは、お前の友人から渡されたものだ。」
「嘘をつくな!」
「嘘ではない。だが預かっただけだ。譲り受けたわけではない。お前に、渡して欲しいと、そう頼まれたのだ。」

 黒乃の表情が、戸惑いに変わっていく。信じていたものに、何か疑いが生まれたときの顔だ。黒乃は、自分がなすべきだと考えていた復讐行為について、勘違いの可能性を予感したのだった。

「話が終わったら、これは武器と一緒にお前に渡そう。…何から話すか。そうな、まずは言い訳から…。お前の友人に致命傷を与えたのは、私ではない。あの娘の致命傷は、白正規軍によるもの。小型のクラスター爆弾が腹部付近で爆発した為に受けた傷だ。」
「でもあの時…」
「そうだな、止めは、この、私が、刺した。」

 ぎゅっと、怪人が武器を握り締めたのが、黒乃にも分かった。怪人の心情を正確に推し量ることは出来なくても、ただ何も感じずに殺したわけではないことが、黒乃の心を少しだけ救った。

「あの子の希望だったからな。楽にして欲しいと、そう言ったから。」
「そう…」

 空気は相変わらず張り詰めていた。黒乃は、この男が言うことを真に受けてよいのか、それとも疑ったほうが良いのか、判断できないでいた。この男は、危険を冒して私の命を助けてまで、何の為にこんな話をしているのだろう。

「お前が私を付け狙っていたのは、この友人のことだろう。」
 黒乃は怪人から目を逸らさず、慎重に小さくうなづいた。
「では私を襲うのは止めて欲しい。」
「……」

 黒乃は決めかねていた。この男がでまかせを言っているのか、真実を言っているのか、判断することが出来なかった。嘘ならこの男は親友の敵だ、しかし真実なら、大げさに言うなら、恩人ということになるのだ。

「証拠がない。」

 黒乃は一言そういった。

「そうだな。」

 怪人も、もちろんそんなことは分かっていた。あの場に居合わせ、自分が止めを刺したところを目撃したこの黒乃が、まさか、ペンダントを渡すべき相手だったとは、そんなことは考えもしなかった。

「証拠はないが、信じて欲しい。」
「……」
「……」

 このままでは平行線だ。そんなことは、誰の目からも明らかだった。

「黒乃」
「呼び捨てにしないで」

 黒乃は嫌がったが、怪人はそのまま話を続けた。

「私達赤面隊は、学生が戦争に巻き込まれることを、殺しあうことを善しとしない。」
「私は人を殺すが、それは世の中を変えようとしない大人だけだ。」
「親友を殺されたお前は、私達の仲間になるだけの理由が十分あると思っている。」

 ここまで言われて、黒乃は怪人の思惑に気が付くことが出来た。

「つまり、私に仲間になれって事。」
「なって欲しい。」
「だから、わかんないって…」
「まぁ、まて。」

 怪人は黒乃の言葉を遮り、そして、自らの赤仮面に手を添えた。

「人柄も分からない相手の話について、嘘誠を判断するのは辛かろうし、教えてあげよう。見たからって、殺したりはしないから安心してくれ。私達は、学生を助けたいと考えている。」

 そうは言っても、怪人は少しためらった。この判断が間違っているとしたら、赤面隊の未来は閉ざされるかもしれない。黒乃は曲がりなりにも諜報部なのだ。

「…予め言っておくけど、別に、黒乃に近づいたのは因縁があったからって訳じゃないからね。」

 怪人は声色の調整をやめ、口調を穏やかに戻すと、ゆっくりとその仮面を外した。

「え…」
「ここまでしたんだ、信じてもらえないと困るよ。」

 黒乃は絶句した。口を少しだけ開いたまま、小刻みに震え、それでもまっすぐと、怪人の顔を目に焼き付けていた。
 親友の敵だと考えていたその男は、その親友の代わりとなってくれていた、怪人だったのだ。驚きや、悲しみが黒乃の中に一度に飛び込んできた。
 怪人は、黒乃の動揺を見て、赤仮面をもう一度、顔につけなおした。

「もう一度頼む、信じて欲しい。」

 黒乃の返事は無い。

「……分かった。残念だけど、今日はこのまま帰そう。出来ることなら、私の正体は誰にも言わないでくれ。このペンダントと、黒乃の武器は返そう。」

 怪人は、黒乃の後ろに回り、手足を縛るロープを外した。そして、呆然としている黒乃の目の前にしゃがむと、その汗ばんだ手を開かせ、小さなペンダントを渡した。

「それじゃ、武器を取ってくるから、もう少しだけ、ここで楽にしていて。」

 怪人がそう言って立ち上がり、くるりと後ろを向くと、黒乃が抑揚の無い声で呟いた。

「まって」

 不意の声に立ち止まる怪人。

「このペンダントは要らない。怪人が持ってて。」
「……わかった。」

 怪人に、黒乃の胸のうちを全て知ることは出来ない。けれどきっとこの行為には、心を許すとか、そういった意味合いが含まれていると怪人は思った。だから、素直にそのペンダントを受け取ることにしたのだ。

「あと、私、仲間になる。」

 黒乃は気が付いた。真実がどうであれ、自分にとって大切な人は、目の前の怪人しか居ないのだ。自分の世界はもう、怪人にしか残されていないことに気が付いた。もし嘘だとしても、騙されたまま一緒に歩むのも、悪くない。

「無理、しなくていいよ。」
「大丈夫」
「本当に?」
「大丈夫」
「わかった。」

 怪人は、潜入時に見につけていた黒い鬼の仮面を取り出した。

「仲間になるなら、祝福しよう。…この仮面は黒乃、お前だ。黒軍に所属し、復讐に駆られていた、復讐鬼だったお前だ。」

 黒乃はその仮面をじっとみた。恐ろしい三つ目に二本角。分かり合えないような表情をしたその仮面は、確かに、周りの言葉に一切耳を貸さず、ただ自分の復讐だけを考えて歩み続けてきた自分かもしれないと思った。

「けれど今日からは違う。赤面隊の一員として勇敢に戦う、勇ましい赤鬼…。」

 そういうと怪人は、速乾性のインクで、仮面を赤く染め始めた。

「私達の仲間、私と同じ赤面隊だ。」

 見る見るうちに黒が赤に染まってゆく。闇の中に吸い込まれるような漆黒は、燃えるような赤に変わっていった。

「これは、これからの黒乃。私達の仲間、赤面隊の夜叉、黒乃。…この仮面、黒乃にあげるよ。赤い仮面なら何を使ってもいいけど、何も無いなら、これ、使って。」
「うん」
「立てる?」
「うん、大丈夫。」

 黒乃は立ち上がると、スカートやら服やらに付いたほこりを払った。

「タケー!黒乃の武器持ってきて!」

 怪人が叫ぶ。何処かから、「おー」という声が聞こえてきた気がした。

「じゃぁこれからよろしく。戦いたくないときは、逃げていいから。“いのちだいじに”だよ。」
「なにそれ、ゲームじゃないんだから。」

 黒乃が少しだけ笑った。

「そうだね、頑張ろう。」
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